こと。
父は年に何回か東京へ遊びに来た。メインは野球観戦。ジャイアン
ツファンだ。東京ドームへはよく行った。勿論、チケットは俺が用
意する。初めは一日だけ用意した。すると負け試合を見ることもあ
るので二日連続でチケットをとることにした。そうすれば勝率が五
割を超えていればどちらかは勝ち試合があるという計算だ。場合に
よって連勝もありえる。寡黙な父だから大きな声で応援したり喜び
を大げさに表現したりはしなかった。
父との観戦以外でも東京ドームへはジャイアンツ戦を観に行った。
昔、父が病弱な母を連れてジャイアンツ戦を見に行ってたこと思い
出して、隅々まで東京ドームを見て回ったが記念になるような所は
見当たらなかった。二人ともジャイアンツファンだったのか、戦っ
ている姿とか応援している所の臨場感で元気をもらえたのか、その
辺はよくわからなかった。父に聞こうかと思った時もあったが、多
分ごまかされると思うから止めた。
父には旅の疲れもあると思うからいつもホテルに泊まってもらって
いた。何故かふっと、ビジネスホテルのクーポンとか利用すればシ
ングルもツインもそんなに料金が変わらないホテルがあるから一緒
に泊まろうと思い泊まった。その日はなんと寡黙でおとなしい父が
ベットのマットをトランポリンのようにピョンピョン飛び跳ねると
ころ見てしまった。俺は今まで何をしてたんだ。まったく成長して
いない。息子との小旅行ならどこでも良かったのかもしれない。確
かにエキサイトシート(客席からグランドに張り出されたシート)
で観戦して目の前あたりでポテンヒットの打球が落ちた時、目で追
ってる様子はなかったように思えた。視力もおちているのであろう
。俺は何をしているんだろう。帰る時だな、そう思った。
しかし、次の日から仕事につくと目の前の仕事に集中してしまいも
う帰ろうと思うことは忘れている。よく男性脳と女性脳の違いで右
脳と左脳をつなぐ脳梁の太さに違いがあるといわれている。女性は
太く、右脳と左脳を同時に使えることができ、男性は細く右は右、
左は左と同時に使うことが苦手とされている。例えば女性は仕事を
しながら家庭のことを考えられるが、男性は仕事は仕事、プライベ
ートはプライベートと分けて考えるといわれている。俺は典型的な
男性脳だ。仕事につくとプライベートのことは忘れてしまう。それ
から数年たってしまった。情けない。
今頃、父は天国で母と再会して生活を送っているであろう。今度、
帰ることは俺なりに精一杯考えてのことだ。だからもう夢に出てく
るのは止めて欲しい。今、父と母はどう見ているかわからいけど、
機会が自分を変えるつもりで頑張ってみようと思う。